電話占いではなく道玄坂の曲がり角を歩いて遭遇した占い師とのやりとり

ルーペを覗きこむ女性

まだ肌寒さが残る三月のある日暮れ。転職活動まっただ中、渋谷で行われた某企業の面接を終え、自分の将来を案じながらトボトボと駅まで歩いて向かっていた。

時刻は17時を少し過ぎ、小腹を空かした私は少し道玄坂通りをそれて、お腹を満たそうと食べ物やさんを探した。徐々に道玄坂を離れていくと、少し狭まった小道脇に

『その人』

は座っていた。手作りのような白い台に【手相】と書かれた木製の立札。座っているのは初老の眼鏡をかけた女性。おばあさん、と呼んでいいのか判断が難しかったが一見、どこにでもいるような人だった。

あまり人通りがなく、ひっそりとした場所だったので不気味に感じたが、なぜかその占い師が気になってしまった。いつもなら占いなんて、と通り過ぎるのに、その人を見入ってしまった。

そんな私に、おばさんは声を掛けてくれた。

『毎日お疲れ様。今日はなにか特別なことがあったの?ひどく疲れてそうね。』

そういって優しく語りかけてくれたおばさんは、占いを勧めるわけでもなく、ただ話を聞こうとしてくれた。突然のことに驚いた私は

『・・・占いは初めてなんです』

と突拍子もないことを言ってしまった。おばさんはそんな私の言葉にくすっと微笑み、椅子に座るよう促してくれた。世間話からありきたりな身の上話など、他愛のない話を温かく聞いてくれたおばさんは、とにかく話しやすかった。

思わず「ただいま」と言ってしまいそうな、安心感のある雰囲気を漂わせていた。当時は一人暮らしで、友人おろか家族でさえも話す時間がなく孤独感でいっぱいだった私は、精神的に行き詰っていた。

そんな私の状況をおばさんが察してくれたのか、私が無意識に心の拠り所を探していたのか…今となっては定かではない。

『…今辛いなら、嬉しいこともちゃんとやってくるのよ。だから、諦めたりしちゃ、だめよ』

と私の手を優しく包んでくれた。ほっとした。不思議な感覚だった。それからもちろん、今後についての手相も見てもらった。

“生命線が異様に長い(笑)”と少し驚かれたが、そのくらい長生きできるんだから、これから少しくらい障害があっても、何事も諦めるな、という励みになる言葉を頂くことができた。

今回は占いというより、カウンセリングに近い体験で、友人から聞いていたような【占い館】とはまた違った経験だったと思う。

また落ち込むことがあれば、道玄坂に足を運んでみようと思う。